4/11開催 セミナーレポートを公開

人材不足時代を乗り切る!「共創型アウトソーシング」と「副業人材活用」の可能性

 深刻化する人材不足の中、企業はどのように人材を確保し活用していくべきか—。「新しい人材活用セミナー in 郡山市」では、郡山発の新たな解決策が紹介されました。

 第1部では(一社)グロウイングクラウド代表理事で三部会計事務所企画室長の三部香奈氏と、2hours代表で㈱ケイリーパートナーズ代表取締役の鷲谷恭子氏から、「共創型アウトソーシング」の実践例が紹介され、第2部では福島民報社の樫村圭亮氏が「副業・兼業人材の活用」の具体的方法を解説。企業の採用戦略から業務の切り出し方、人材との協業まで、人材活用の新たな選択肢が示されたセミナーの内容をレポートします。

第1部:全国から注目を集める「郡山発の新しいアウトソーシング」

―「共創型アウトソーシング」とは何か

 「アウトソーシングというと、業務を切り出して外部に委託するイメージがありますが、私たちの提案する『共創型アウトソーシング』はそれだけではありません」。鷲谷氏はそう切り出しました。
 鷲谷氏が提唱する共創型アウトソーシングのポイントとして、以下が挙げられました。
1. 単なる業務委託ではなく、企業の課題から解決策を一緒に考える
2. チーム制で多様なスキルを持つメンバーが企業をサポート
3. 社内の従業員との協業により新たな視点やノウハウを提供する
 「単なる発注者、受託者という関係性ではなく、チームの一員として中に半分入らせてもらい伴走する形です」と説明しました。このアプローチにより、単に人手不足を補うだけでなく、組織全体の強化につながるという点が強調されました。

―多様化する働き方と価値観の変化

 三部氏は、フリーランスの増加や働き方の多様化について言及しました。ランサーズの調査によると、フリーランス人口は2024年に1303万人に達し、10年前に比べて大幅に増加しているとのことです。
 「収入を増やすことだけでなく、自己実現やキャリア形成、自分らしく働きたいという価値観の変化が背景にあります」と三部氏。自身が運営するコワーキングスペース「co-ba koriyama」の会員数も57件と増加傾向で、コロナ禍以降、リモートワークの浸透によりさらに多様な働き方が広がっていると説明しました。

―シェアリングエコノミーの視点からの人材活用

 三部氏は、コワーキングスペースで見られる4つのシェアリングについて触れました。
1. 人材のシェアリング:複数企業で専門人材を共有
2. 場所のシェアリング:オフィススペースの共有
3. 情報・アイデアのシェアリング:異業種交流による知見共有
4. 仕事のシェアリング(ワークシェアリング):業務を分割して複数の人が担当
 このうち「ワークシェアリング」については、鷲谷氏のケイリーパートナーズが実践しており、「2時間から働ける仕組みを作り、3〜5名のチームで1つの企業をサポートしています」と説明。短時間勤務や在宅勤務を組み合わせ、多様な人材が活躍できる環境を整えています。

―実例に見る「共創型アウトソーシング」の成果

 鷲谷氏は共創型アウトソーシングの具体的な活用例として、以下の4つを紹介しました。
1. 行政事業の事務局業務:複数の事業者が共同で取り組む事業の調整役
2. 販売管理業務:セールスと事務作業の間に入り業務フローを改善
3. デジタル広報:企業の魅力を外部の目線から発信
4. 月次決算の早期化:適切な経営判断を促す情報提供
 「経営者視点と現場の視点にはギャップがあります。両方の視点を持ち、社内ですり合わせることで、より効果的な提案ができるよう心がけています」と鷲谷氏。社内だけでは見えない視点を提供することで、企業の課題解決に貢献していると説明しました。

―参加者の声から見る人材課題

 セミナーに参加した企業からは、「季節ごとに発生する業務を任せたいが、その都度教育するコストがかかる」「技術系の仕事を外部に任せる際の品質管理が難しい」「フリーランスとして働く上でのスキルアップの方法が知りたい」など、多様な課題が提起されました。
 これらの課題に対し、三部氏は「同じような課題を持つ人たちとの協業やコミュニティ構築が解決につながる可能性がある」と提案。鷲谷氏も「単発の支援より、少額でもサブスクリプション型で継続的に関わり、必要時に稼働するモデルが効果的」と、新たな関係性の構築を提案しました。

第2部:副業・兼業人材の活用法を知る

―人材戦略の考え方

 樫村氏は、中小企業庁の「人材活用ガイドライン」を紹介しながら、企業の人材戦略について解説しました。
 「人手確保したいという前に、まずは経営課題から見つめていきましょう」と樫村氏。このガイドラインでは、経営課題から必要な人材を「中核人材」と「業務人材」に分類し、それぞれに合った確保手法を提案しています。
 中核人材とは「高度な専門性を有し、組織の管理運営の責任者となる人材」、業務人材は「部門業務の遂行を担う人材」と定義され、それぞれに適した採用・育成手法が示されています。

―副業・兼業プロ人材とは

 「副業・兼業プロ人材とは、主に都市部の企業で働く社員や都市部を拠点に活躍している個人で、様々な情報技術や経験を持つ人たちです」と説明しました。
 特にコロナ禍以降、大企業を中心に副業解禁が進み、リモートワークが浸透したことで、地方企業をサポートする副業人材が増加しているとのこと。また、福島県は関係人口が全国でも上位にあり、副業人材を活用しやすい環境にあると強調しました。

―成功事例に見る副業人材の活用

 樫村氏は、福島民報社が展開する「ふくマッチ」というサービスを紹介しながら、様々な成功事例を挙げました。
 例えば、食品メーカーが月額5万円でマーケティングのプロを招き、新ブランド事業の戦略立案をサポートしてもらった事例や、印刷会社がデジタル化による業務効率化のためにIT専門家を採用した例などです。
 「多くの場合、月額3万円程度の謝礼で、月に2回程度のミーティングのほか、メールやチャットでプロ人材とやり取りします」と樫村氏。経営課題の解決に特化したスキルを持つプロ人材を、必要な期間だけ業務委託で活用できる点が大きなメリットだと説明しました。

―副業人材活用のポイント

 樫村氏は、副業人材を活用する際のポイントとして、以下の3点を強調しました。
1. 経営課題を明確にし、具体的な役割を設定する
2. オンラインでの打ち合わせが中心だが、初回は対面での打ち合わせを推奨
3. 社長だけでなく従業員も一緒にミーティングに参加し、ノウハウを社内に蓄積する
 「副業人材は家庭教師のような存在です。困った時にすぐ相談できる身近なパートナーとして活用できます」と樫村氏。また、「福島県出身者や福島に関心のある人が多く、地元貢献の意識から応募してくる方も多い」と、金銭的な報酬ではなく、地域貢献という動機が大きいと説明しました。

まとめ

―人材活用の選択肢を広げ、経営課題を解決する

 「これからの人材活用は、雇用だけではなく多様な選択肢を持つことが大切です」と三部氏は強調しました。参加者からは「技術系専門職をどう外部化するか」「フリーランスとしてのスキルアップをどう図るか」といった具体的な課題も提起され、活発な意見交換が行われました。
 鷲谷氏は「もはや社内人材だけで完結しようという思考は持たない方がいい」と指摘。「人を雇うという発想だけでなく、人と組むという視点を持った経営に変わっていくことが必要」と語りました。参加者に配布された「人と組む視点で考えるチェックシート」では、自社の課題を振り返り、外部の力を借りる可能性を探る機会も提供されました。
 アウトソーシングや副業人材の活用は、単に人手不足を補うだけでなく、新たな視点や専門知識を取り入れ、企業の成長につなげる可能性を秘めています。このセミナーを通じて、多くの企業が人材活用の選択肢を広げ、経営課題解決の糸口が見つかる一助となることを願っています。