【新連載スタート!】【第1回】 なぜ「繁忙期の人手不足」を解決できたのか 〜ECサイトを持つ地方の食品メーカーの採用「裏」話〜

人材不足が深刻化する今、地方企業では「人」の確保と活用が頭を悩ませる課題となっています。本連載は「そんな使い方があったのか」と驚く副業人材の活用方法を全国から集めて、12の物語でご紹介します。

副業採用の現場は「副業者は片手間だから結局は成果が出ない」と言われていた頃から一変しています。「正社員だけの組織運営」から「外部人材を使った組織運営」への切り替えが進む昨今、副業採用に注目が集まっているのです。
といってもそれは「無理難題に今から挑戦すること」ではありませんでした。繁忙期のECサイト運営に毎年苦しんでいた地方の食品メーカーの採用「裏」話をお届けします。
「アドバイスだけされても意味がない」
「外部人材は責任感に乏しい」
そんなイメージはいまも正しいのかを検証する一助となれば幸いです。
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【3行で読むにはこちら】
(1)地方の老舗菓子メーカーA社がお歳暮シーズンの2か月間だけ副業人材を起用した。売上120%アップ・クレーム半減という驚きの結果を実現するまでの物語を紹介する
(2)「正社員かアルバイトか」という二択を超えた「必要な時期に必要なスキル」を確保する。この新しい採用戦術が、地方企業の経営課題を解決するカギになっている
(3)副業人材の活用は単なる「人手確保」を超える。社内の若手社員が外部のプロから直接学べる「知識移転の機会」としても機能する

「プロ人材の活用の詳細を知りたい」「外部人材の活用の相談がしたい」場合は、こちらからお問い合わせください ※お問い合わせ先:https://fukumatch.jp/inquiry/

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目次
●永遠の採用課題は「繁忙期の人材確保」である
●クレームが止まらない〜老舗菓子メーカーは限界を迎えていた〜
●繁忙期プロジェクトは「副業」からはじまった
●ご提案差し上げても宜しいでしょうか?〜副業人材は何を懸念したのか〜
●2ヶ月で終わらせない〜副業の効果を最大化するためのポイント〜
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●永遠の採用課題は「繁忙期の人材確保」である

「この時期だけ、あと3人いれば...」
地方の製造業や小売業の現場を訪れると、この言葉を耳にすることが珍しくありません。先日訪問した食品メーカーでも、工場長が溜息交じりにこう漏らしていました。
「師走になると注文が3倍に膨れ上がるんですよ。今の人員で回せるギリギリまで頑張っているけど、どうしても納期が遅れがちです。かといって通年で雇うほどの余裕はありません」
工場長の顔には疲労の色が濃く出ていました。カレンダーを見ると、従業員の勤務シフトがびっしりと埋まり、赤ペンで「残業」の文字が踊っています。
これは特別な話ではありません。12月のお歳暮シーズン、夏のギフトシーズン、観光地の繁忙期—地方企業にとって「特定の時期だけ人手が足りない」という課題は、どこでも聞かれる悩みです。
「アルバイトを募集しても応募がない」
「せっかく教えても、繁忙期が終われば辞めてしまう」
「来てくれても、仕事を覚えるまでに時間がかかりすぎる」
私が地域の経営者との飲み会で耳にする悩みです。表情に諦めが滲んでいます。
副業マッチングの相談会で、ある印刷会社の社長はこう話していました。
「年賀状シーズンは地獄と言っても過言ではないですよ。毎年何とか乗り切っているけど、体力の限界を感じています。アルバイトも集まらないし、設備増強する余裕もない。でも、この繁忙期の売上がなければ会社が回らないんです」

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売上グラフを見せていただくと、12月だけ突出した山になっています。

「特定の期間だけ、しかもすぐに成果を出せる人材はいないのか」。

これが地方企業の切実な願いです。しかし、多くの経営者は「正社員採用」か「アルバイト・パート採用」の二択で考えがちです。他にもっと良い採用の考え方はないのでしょうか?

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●クレームが止まらない〜老舗菓子メーカーは限界を迎えていた〜

「もう無理だと思ったんです。このままじゃ潰れる」
10月上旬のある日、地方の老舗菓子メーカーA社の営業部長・Bさんは、真っ赤な顔で社長室に飛び込みました。画面には昨年のお歳暮シーズンのクレーム履歴が映し出されていました。
A社は地域に愛される老舗企業です。地元素材にこだわった和菓子づくりで知られ、地域では「あの会社のお菓子は冠婚葬祭に欠かせない」と評判です。7年前にECサイトを立ち上げてからは、全国からの注文も増えてきていました。
しかし、問題はお歳暮シーズンです。
「11月から12月にかけて、注文が通常の4倍に跳ね上がるんです。製造はなんとか増産体制で対応できるんですが、ただでさえ不慣れなECサイトはもう勘弁してほしいですよ」
B部長の声には焦りが混じっています。
「ECサイトの運営、広告管理、顧客対応まで、若手社員のCさん一人で回しているんですが、昨年は悲惨でした。クレームは増えるし、広告調整する余裕もないし...売上は伸びたものの、リピート率は下がっています。でも私も教えられないから”頑張れ”としか言えないです」
社長のDさんも課題に気づいていました。ECサイトの立ち上げは自分の肝いりプロジェクトです。現在では売上全体の30%を占めるまでに成長しています。しかし、季節的な波が大きく、対応の難しさも痛感していました。
「アルバイトを雇うのはどうだ?」
「試しましたよ。でも、ECサイト運営のノウハウを短期間で身につけるのは難しいです。結局、Cさんが教えるのに時間を取られて、余計に負担が増えただけでした」
D社長はカレンダーをめくりながら考え込みました。お歳暮シーズンまであと1か月。今年も同じ轍を踏むわけにはいきません。
「何か別の方法はないものか...」

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●繁忙期プロジェクトは「副業」からはじまった

ECサイト担当のCさんは、夜遅くまでオフィスに残っていました。パソコンの画面には、昨年のアクセス解析データが映し出されています。
「何かが足りないのはわかるんだけど、言語化できない」
入社3年目のCさんは、大学でマーケティングを学んでいました。しかし、実践となるとまだ経験不足を感じています。理論と現実のギャップに悩む日々です。
そんな中、たまたま参加した地域の異業種交流会で、ある化粧品メーカーのネット担当者と意気投合しました。
「うちも似たような状況だったんですよ。でも、去年からある方法を試したら劇的に改善したんです」
「え?何をしたんですか?」
「副業でプロに繁忙期だけ参画してもらったんです。大手ECサイトで働いている人に、週末と平日夜だけ関わってもらいました」
Cさんは可能性を感じます。「それって、うちでも可能なんですか?」
「最初は半信半疑でしたが、提案力が違いましたね。この季節にこんな訴求をしたらどうか、このデータからこういう対策を、とか。我々では思いつかないアイデアをどんどん出してくれましたよ」
翌日、Cさんは勇気を出してB部長に提案しました。「副業のECマーケティングのプロに、11月から12月だけ手伝ってもらうのはどうでしょうか?(本当は準備を始めないといけない9月くらいから入ってほしいけど)」
こうして、A社の新たな挑戦が始まりました。

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●ご提案差し上げても宜しいでしょうか?〜副業人材は何を懸念したのか〜

10月中旬、A社のミーティングルームに初めて現れた副業人材のEさんは、想像と少し違っていたそうです。派手な印象を勝手に想像していたCさんを裏切り、穏やかな表情の40代男性です。
「ECサイトを拝見しました。素晴らしい商品ばかりです。でも、僭越ながらもったいないところがいくつかあるように思います。ご提案差し上げても宜しいでしょうか?」
Eさんの指摘は的確でした。商品写真の見せ方、購入導線の複雑さ、顧客レビューの活用不足...。Cさんが気づかなかったポイントを次々と挙げていきます。
「でも、2ヶ月という短期間でできることは限られています。まずは優先順位をつけてもよろしいでしょうか?」
Eさんは大手ECサイトで12年間マーケティング業務に携わってきました。今は別の会社に勤務しており、副業として地方企業のサポートを始めたところです。
「私も地方出身者なんです。地域の良い商品をもっと全国に届けたいという思いがあって応募させていただきました」
その言葉に、Cさんは心強さを感じました。具体的な改善は早速始まりました。
●1週目:商品ページのリニューアル。お歳暮用ギフトセットの魅力を伝える写真撮影と説明文の修正。
●2週目:リピート率向上のための顧客管理システムの調整。過去の購入者向けのメール文面を一緒に考案。
●3週目:検索広告の見直しと、SNSでの情報発信強化。
「こんなに早く変化が出るとは思いませんでした」とCさんは驚きます。
「小さな改善でも、効果の高いポイントから手をつければ変化は早いものです」とEさんは説明しました。
11月中旬、早くも効果が数字に表れ始めました。前年同期と比べてサイト訪問者が1.5倍、購入率も10%アップしています。
しかし、最も価値があったのはCさん自身の学びでした。
「Eさんと一緒に仕事をすることで、自分一人では気づかなかった視点をたくさん学べました。特にデータの見方や、顧客目線でのサイト改善の考え方は理論を超えていました」
12月末、お歳暮シーズンが終わった時点での結果は驚くべきものでした。
売上は前年比120%。そして懸念だったクレーム件数は半減したのです。
「商品の品質は変わっていないのに、こんなに変わるんですね。うちの商品にもっと自信を持てました」
D社長は決算報告を見ながら嬉しそうに語りました。「人材を活用するという考え方自体を変える必要があるのかもしれませんね。正社員採用だけが、採用のあり方じゃないのかもしれません」

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●2ヶ月で終わらせない〜副業の効果を最大化するためのポイント〜

A社の事例は、地方企業の繁忙期対策として副業人材の活用が効果的であることを示しています。では、他の企業が同様のアプローチを検討する際、どのようなポイントに注意すべきでしょうか。A社の経験から見えてきた実践ポイントを整理します。

「プロ人材の活用の詳細を知りたい」「外部人材の活用の相談がしたい」場合は、こちらからお問い合わせください ※お問い合わせ先:https://fukumatch.jp/inquiry/

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1. 最も効果を発揮する領域を特定する
A社の場合は「ECサイトの最適化とプロモーション強化」に絞りました。Eさんと最初に行ったのは「何が最も売上に影響しているか」の特定作業でした。
「あれもこれも手をつけたい気持ちはわかります。でも短期間で成果を出すには、効果の高いポイントに集中すべきです」
Cさんはこの言葉を胸に刻みました。限られた時間の中で成果を出すには、「何に取り組むか」だけでなく「何に取り組まないか」の決断も重要だったのです。
繁忙期に最も影響を与える業務領域はどこでしょうか?そこに外部のプロの知見をもとに「業務の優先順位をつける」から始める。実は「何を任せるかはっきりさせてからじゃないと外部の人材に任せられない」と考えなくても良かったのです。

2. 相性とコミュニケーションを重視する
「最初は緊張しました」とCさんは振り返ります。「でも、Eさんはこちらの状況や限界を理解した上で提案してくれたので、すぐに信頼関係が築けました」
A社では週1回のオンラインミーティングと、日々のチャットでのやり取りを基本としていました。「頻繁にコミュニケーションを取ることで、小さな疑問もすぐに解決できました」
また、Eさんは「教える」のではなく「一緒に考える」スタンスだったことも良かったと言います。「自分のやり方を押し付けるのではなく、弊社の文化や強みを理解した上での提案でした」
外部人材を活用する際には、スキルだけでなく、相性やコミュニケーションスタイルも重要な要素となります。

3. 社内への知識移転を意識する
「一番良かったのは、Eさんの知識が社内に残ったことです」とB部長は評価します。
A社では副業人材との協働期間中、Cさんだけでなく他の若手社員も巻き込んだ勉強会を開催しました。Eさんのノウハウを社内に蓄積する仕組みを意識的に作りました。
「今年の繁忙期は自分たちだけでも対応できそうです。もちろん、新しい施策を打つ際には再びEさんの力を借りるかもしれませんが」とCさんは自信を見せます。
副業人材の活用は「一時的な人手確保」という価値を超えます。「知識とスキルの獲得機会」と捉えることで、長期的な効果が生まれるのです。

地方企業にとって「人材の確保」は永遠の課題です。しかし、「必要な時だけ、プロの力を借りる」という発想は、その課題を解決する新たな選択肢となりつつあります。
「正社員かアルバイトか」という二択ではなく、「必要な時期に必要なスキル」を確保する。そんな柔軟な人材活用が、地方企業の可能性を広げているのです。
今年の繁忙期を迎える前に、あなたの会社でも「プロの力を借りる」選択肢を検討してみませんか?福島から始まる新しい人材活用モデルが、地方企業の課題解決の一助となることを願っています。
次回は「一人複数役問題を解決する~地方企業ならではの課題に効く~」をテーマにする予定です。少人数で多様な業務をこなさなければならない地方企業特有の課題と、その解決策をご紹介します。

(執筆:佐野創太/編集:樫村圭亮(「ふくマッチ」責任者)/監修:福島民報社)

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