11/11開催 セミナーレポート

地方企業の未来を切り拓く!新しい人材活用の実践例

 企業が抱える人材不足は、地域を問わず深刻な課題となっています。特に地方では、若年層の流出や労働力の減少が企業経営に直結する大問題です。この難題にどう立ち向かうべきか―。「新しい人材活用セミナーin会津若松」では、その解決策が提示されました。
 第一部では株式会社ハタフルの臼井翼氏が「選ばれる企業になる」ための魅力的な情報発信方法を解説し、第二部では福島民報社の樫村圭亮氏が、副業・兼業プロ人材の活用による課題解決策を具体例とともに紹介しました。地方発の新たな採用戦略が集結したこのセミナーの内容をレポートします。

第一部: 選ばれる企業になる!「企業の魅力を伝える方法」とは

―臼井氏の挑戦と提言

 「採用活動は婚約と同じだと思っています」。株式会社ハタフルの代表、臼井翼氏はそう切り出しました。会津若松市出身の臼井氏は、IT業界での経験を経て福島県に戻り、地方企業を支援する「株式会社ハタフル」を創業。これまでに全国200社以上の中小企業をサポートしてきた実績があります。
 臼井氏が提唱する採用成功の秘訣は、以下の3ステップに集約されます。
1. 採用ターゲットを明確にすること
2. ターゲットに響く企業の魅力を発信すること
3. 適切な媒体を選び求職者と出会うこと
 これを「婚約」に例え、ターゲット設定を「どんな相手と結婚したいかを考えること」、企業の魅力発信を「自分の魅力を伝えること」、出会いの場の選定を「掲載場所を選ぶこと」と説明しました。具体例として、地域課題を解決する取り組みや、社員の教育制度を詳細に公開することで信頼を得た企業の成功事例が紹介されました。

―求職者が見る「4つの軸」とは?

 臼井氏は、求職者が仕事を選ぶ際の4つの軸に触れました。
1. 仕事軸:業務内容やキャリア形成への魅力
2. 待遇軸:給与や福利厚生の条件
3. 会社軸:企業のビジョンや価値観への共感
4. 人軸:一緒に働く人や職場の雰囲気
 特に福島県では待遇軸の重要性が高いとし、給与や休日といった条件を明確に提示する必要性が説かれました。一方で、会社軸や人軸を重視する求職者に対しては、企業のビジョンや働く人々のストーリーを丁寧に伝えるべきだと提案しました。

―自社の魅力をどう発見するか

 「自社にどんな魅力があるのか分からない」。そんな悩みを抱える企業も少なくありません。臼井氏は、顧客からの評価や社員の声、さらには他社との比較を通じて自社の魅力を探し出す方法を解説しました。「魅力は新たに作るものではなく、既にあるものを見つけ出すことが重要」と語りました。
 さらに、写真や動画を使って職場環境を具体的に見せることや、SNSを活用して魅力を広く発信する実践的な方法も紹介。「採用の第一印象を左右するのは、企業が発信する情報の質です」と語る臼井氏の言葉には説得力がありました。

第二部: 副業・兼業プロ人材の活用の考え方

―副業人材の力を引き出す

 第二部では、福島民報社の樫村圭亮氏が、副業・兼業プロ人材を活用した戦略を提案しました。「地方企業が大都市圏の副業プロ人材を活用することで、経営課題を乗り越えられる」と語る樫村氏。福島県が関係人口の多い地域であることを強調し、他県よりも副業人材を活用しやすい環境であることを示しました。

―成功事例に見る副業人材の活用術

 樫村氏は、食品メーカーがプロのマーケターを副業で採用し、新しいブランド戦略を立案して成功した事例を紹介。さらに、印刷会社が業務効率化を進めるためにIT専門家を採用した例や、建設会社が新卒採用戦略を改善した例など、幅広い成功事例を挙げました。これらの実績は、副業人材の活用が単なる一時的な補助ではなく、企業全体の成長を支える重要な要素であることを物語っています。

―「ふくマッチ」が示す未来

 樫村氏が紹介した「ふくマッチ」は、副業・兼業人材を福島県内の企業とマッチングするサービスです。例えば、月3万円の謝礼でプロのアドバイザーを採用し、マーケティングや人材戦略の立案を行うといった具体的な取り組みが可能です。
 樫村氏は、「副業人材を活用することで、地方企業もコストを抑えながら質の高いサポートを受けられる」と語り、企業の成長のための新しい選択肢を提示しました。

まとめ

―地方から全国へ、採用の新時代を切り拓く

 臼井翼氏の「採用は結婚と同じ」という言葉には、採用活動の本質が凝縮されています。さらに、副業・兼業プロ人材の活用という新たな戦略は、地方企業にとっての希望となるはずです。
 このセミナーで共有された知見が、企業の新たな可能性を切り拓く一歩となることを願います。

第一部の様子

第一部の様子

第二部の様子

第二部の様子